【未来へつなぐ光徳寺】第2回:直面している課題 〜「新しくする」のではなく、「安全に守り伝える」ために〜

皆さま、こんにちは。光徳寺住職の森智崇です。

前回の未来へつなぐ光徳寺住職ブログでは、約300年という長い歴史を持つ光徳寺本堂が、世代を超えてご門徒の皆さまに守り継がれてきたこと、そして、お寺は皆さまの悲しみや喜びに寄り添い続ける「阿弥陀さまと私たちのご縁の場所」であるという思いをお話しさせていただきました。

今回は、その大切な場所が今、どのような現実に直面しているのかをお伝えしたいと思います。

今回の改修計画は、そもそも私自身の切実な思いが発端となっています。数年前より本堂でお勤めをしていると、強風のたびに建物が軋む音が激しくなり、参拝者の不安の声も大きくなり、部分的に発生する雨漏りもその都度補修をして凌いできましたが、いよいよ対応が追いつかなくなってまいりました。 お参りに来られる皆さまの「安全と安心」が保てないかもしれないという不安が日増しに大きくなり、「ここからの対応は、もはや住職一人では手に負えない」と強い危機感を抱いたことが、この計画の始まりでした。


専門家の調査で突きつけられた「45mmの傾斜」

光徳寺の現在の本堂は1727(享保12)年に建立され、前回の屋根修理が行われた1975(昭和50)年からは約50年が経過しています。老朽化が進んでいることは前住職の時代からの懸案事項でしたが、今回、私の感情面での状況把握ではなく、ご門徒皆で対応にむけて取り組んでいけるように光徳寺役員会を経て、専門家(宮大工などの建築業者)に綿密な現状調査を依頼しました。

その調査報告を見た時、私は正直に申し上げて痛切な危機感を覚えました。

現在、本堂では以下のような深刻な課題が生じています。

  • 雨漏りの発生: 屋根瓦(セメント瓦)が耐用年数を超過し、2年ほど前から部分的な雨漏りが発生しています。都度補修で凌いでいますが、瓦も下地も限界が近づいています。
  • 建物の歪みと部材の傷み: 構造物全体の老朽化が進み、部材の虫食いや折損箇所が判明しました。
  • 人命に関わる柱の傾き: これが最も深刻な問題です。本堂全体が北西に傾き、主要な柱数本が最大で45mm沈下し、斜めに傾斜していることが確認されました。

もしこのまま放置すれば、雨漏りや建物の歪みがさらに進行し、最悪の場合は地震などで倒壊する恐れがあり、お参りに来られる皆様の人命に関わる危険性があります。手遅れになって修繕費用がさらに膨れ上がる前に、今、どうしても手を打つ必要があるとの見解でした。

時代の変化と、会館(広間)の限界

本堂とあわせて、築約50年となる会館(広間)も大きな転換期を迎えていました。

近年、お寺でご法事を執り行うご家庭が増えており、現在は全体の約3割が光徳寺で行われています。しかし、本堂には空調がないため、夏や冬は便宜上、会館でご法事を行うことが多くなっています。 ところが、元々は住職家族のお内仏(仏間)として造られた会館(広間)は、ご法事を行うには手狭であり、御本尊の配置も適切ではありません。

さらに大きな問題は、「お参りのしやすさ」です。 玄関の間口が狭く段差があるため、足の不自由な方や高齢者のご移動が大変困難になっています。余命を告知された方が最後のお参りにと、ベットやお子様に抱えられながらのご参拝も増えてきました。

また、トイレや給水設備といった水回りが近くにないため、ご不便をおかけしてしまっています。近年増えている小規模な家族葬などを慣れ親しんだお寺で安心してお勤めいただける環境づくりのためにも、大切なご縁も気兼ねなく受け入れるようにも、バリアフリー化を含めた会館の設備整備が急務となっています。

私たちの目的は「新しくすること」ではありません

これらの深刻な課題を前に、まずは役員会を何度も行い、「本堂は歴史保存優先、会館は居心地優先」という骨子を掲げました。

本堂については、全く新しい別の建物に建て替えるということでは、300年の間、皆様の先人が手を合わせ、涙をこぼし、教えを聞き、お念仏申してきた空間のぬくもりが失われてしまいます。また費用も莫大なものになります。

今回の改修は、建物を「新しくする」ためではなく、「300年守られてきた本堂を、これからの世代へ安全に伝えるための修繕」と位置づけ、伝統的な木造建築の構造を大切に残しながら、歪みを修正し、基礎や床下を補強することで、この先も安心して過ごせる場所にすることを目指しています。

日々の雨漏りなどの状況は都度寺報でお伝えしてまいりましたが、抜本的な対応へ向けて歩み出すにあたり、私は「住職一人ではなく、皆で担うお寺づくりにしたい」と強く願いました。 役員会で数か月にわたり何度も慎重な協議を経て、「本堂は歴史保存優先、会館は居心地優先」という方向性を共有し、総代会の承認を経て立ち上がったのが「未来へつなく光徳寺本堂・会館(広間)改修計画 建設委員会」(以下 委員会)です。

委員会の道のりは決して平坦なものではありませんでした。各地区からの代表者や建築の専門家にも加わっていただき、厳しい現場調査、複数業者からの相見積もりの比較検討など、住職1人が背負う事ではないと委員の皆さまはご自身の時間を削り、並々ならぬご苦労のもとで計画の土台を作ってくださいました。本当に感謝に耐えません。

しかし、この大事業を進めるにあたり、最も大切なのは「ご門徒の皆さまのお気持ち」です。委員会の皆さまの尽力である程度の計画を立てた上で、皆さまがどのようなご不安を抱えておられるのかを真っ直ぐに知るため、全戸対象のアンケートを実施するに至りました。

次回【第3回】は、皆さまから寄せられたアンケートの率直なお声と、私一人ではなく皆さまと一緒に歩むために立ち上げた「建設委員会」についてお話しします。

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